HITORIGOTO
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カナダからの手紙



 HPのメールのコーナーから仕事依頼のメールが届いた。私のメールフォルダは、HPのフォームから届いたメールを振り分ける設定にしてあるので、私のHPへの感想や、DTPコーナーへの質問、そして仕事の打診のメールが届いたことが一目でわかるようになっている。現在、数ヶ月に1度の割合でお仕事の見積もり依頼などが届く。有り難いことだ。

 この日届いたお仕事の見積もり依頼のメールは、それまでの物と少々違っていた。そう、タイトルにある通り、カナダから届いたメールだった。カナダから来たとはいえ、先方は日本人で、メールももちろん日本語である。英語で書かれたら私には内容が解らないし、SPAMだと思って削除していただろう(笑)。内容は日本人向けのHPの制作。もちろん日本語での制作。発信先がカナダと言う以外は別に変わったことはなかったのだが「インターネットをやっていると、こんなこともあるんだなぁ」と驚いた。なにしろ本当に細々と仕事をしているので、海外からの制作依頼など来るとは夢にも思っていなかったし、なんだかウチって、すごくグローバルな会社みたいじゃないか、って気がしてくる(笑)。

 料金的に折り合いが付いたこともあり、こんな事は滅多にない事なので「何事も経験」とばかり、喜んで引き受けさせていただいた。で、色々と打ち合わせ(もちろんメールで)していた際に「ふーん」と思うことがあったので、ここで紹介することにする。

以下、先方さんから届いた質問。
●お支払いはもちろん前払いですね?
●こちらからですと銀行振込になるのでしょうか?
●会社名義での領収書はいただけるのでしょうか?(できれば英語にて)

これに対し私の返事は
■私は常に納品後に請求書を送らせていただき、その後お客様の規定の締め日、振込日に合わせて入金していただいておりますが、カナダでは前払いが普通なのでしょうか?
■申し訳有りませんが、銀行振込以外の方法を知りません。何しろ海外のお客様とのお取り引きは初めてなもので、他にどのような手段があるのかご教授頂ければ幸いです。
■領収書を書くことは構わないのですが、日本では銀行振込の場合、振込明細が領収書代わりとして扱われるため、通常領収書を書くことはあまりありません。これもやはりカナダでは違うのでしょうか?それと申し訳ないのですが、私は英語が全く出来ないため英語の領収書の書き方が解りません。もし領収書が必要でしたら、書き方のフォーマットなどを送っていただくことは可能でしょうか?

 結果から言うと、後払い・銀行振込・領収書はやはり必要ということでメールにてフォーマットを送ってもらい、そのままメールで返信すればOKということになった。
さて、ここで一番驚いたのは、料金前払いか後払いかということ。上の内容をメールしたところ、「カナダで後払いでしたら、半分くらいは払わないのでは(笑)とか考えたりします。」という返事をいただいた。海外ではそういうものなんだろうか? これも「お国柄」なのか…?

 実は、カナダという国はそれまで全く縁が無かったわけでは無く、10数年前に新婚旅行で訪れた地もカナダであった。なんだかすごく懐かしいという想いもある。そう言えばその旅行の最中、やはり「お国柄の違い」を体験した。成田空港を夕方出発する便でカナダに向かった私たち夫婦は、バンクーバーでトランジット、そのままトロントまで一気に足を延ばし、一泊目のホテルはナイアガラの滝が窓から見える割と有名な大手チェーンのホテルに宿泊した。成田を出てから10時間以上移動した後の宿泊先である。(でも時差の関係であまり時間はたっていなかったが…)いくら普段、昼も夜も関係ない職業に付いているとは言え、さすがにヘトヘトになっていた。で、倒れ込むように就寝したのだが、その晩、夜中になんと部屋の天井が崩れてきたのである(崩れると言っても10cm位の天井の壁材が落ちてきただけだが)。しかも狙ったかのごとく、私の顔の上に…。幸い怪我はなかったが、次はポタポタと水が垂れてきた。つまり上の階で漏水が発生し、その影響で天井の壁材が剥がれ落ちたのだろう。ビックリして跳ね起きたその時間は3〜4時頃だったと思う。あわてて電話を取ってフロントへ繋いだのだが、この状況を英語でなんと言って説明して良いか解らない(笑)。とりあえず「カモン、ハリアップ」と言って受話器を置き、しばらくして来たホテルマンに天井とベッドを交互に指さし身振り手振りで説明した。すぐに部屋を代えてもらったのだが、その際一言も「sorry」という言葉を聞けなかった。

 これは日本では考えられない事だと思うのだが…。ハプニングはどこでもあるだろう。しかし、日本でこういう事が起これば大騒ぎで、ホテル側はお客様に対して平謝りにわびを入れるはずだ。これでも私たちは一応ハネムーンで、人生において記念すべき時間をこのホテルで過ごしているのだ。このような事態になっても、笑ってすまさなければいけないのか、この国のホテルは? 大和民族をナメてんじゃねぇのか? と言いたかったのだが、何しろ英語が出来ない(笑)。で、翌朝、現地係員の方に事の次第を説明し、「別に宿泊代を返せとか、何かしろ、とは思わないが、一言ホテル側に謝ってほしい」と告げた。すると現地係員さんは困った顔で「そこの従業員さんに言っても"それは大変でしたね"と言われるだけですよ。悪いのは彼らでは無いですから。もしどうしても謝ってほしいなら、別の所にいるホテルのオーナーを呼ぶことになりますし、そうすると、もう何日かここで延泊することになりますが…。」
結局、そう言われてすごすごと引き下がった私…(笑)。やはりこれもお国柄なのだろうか? まぁ、今となっては笑い話のネタになっているのだが…。

 日本人の「なぁなぁ体質」は私もあまり好きではない。しかし、この場合は同じホテルの従業員として、お客にかけた迷惑を詫びるというのは、良い意味での連帯責任として「有り」なのではないだろうか? 後払いだと平気で「ギャラを支払わない」という行為も、日本では信頼関係という名のもとに、私はあまり心配したことがないのだが、甘いだろうか?

 HPの仕事は、多少紆余曲折はあったものの無事納品して終了した。あの時10時間以上かけて旅した太平洋の向こう側の国から、今は瞬時に手紙が届き、私のような者でも一緒に一つの仕事が出来るような時代になったのだなぁと思うと、何だか不思議な感じがする。
もう一つ感じたことは、コミュニケーションをメールだけに頼って仕事を進めるのは、やはり難しいってこと。相手の表情や、声のトーンを感じることができず、文字だけで思っていることを表現するのは、結構やっかいだった。幸い先方の方も気さくな方だったらしく、はじめに懸念していたほどではなかったし、まぁ、いい経験になったと思っている。

 そうそう、無事きちんと入金していただいた事と、入金の際、銀行から「海外からの入金」に対して確認の手続きが必要だったこと、それと思っていた以上に入金手数料を取られたことを付け加えておく。

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