HITORIGOTO
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棚のぼた餅は甘いか?
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 5月末。やはり入金は確認できない。a氏にことわった上で、やはり直接B社へ問い合わせることにした。a氏にB社の担当者b氏の名前を聞き出しFAXを送信。本当はこのような場合、直接B社へ出向いた方が良いのだが、30万円の入金を確認するためだけに大阪へ往復するのは、やはりちょっと気が引ける。
電話するよりも書面が残るFAXの方が良いだろうと判断して、以下のFAXを請求書の控えと共に送信した。

B株式会社 b様

以前、御社の○○のお仕事をやらせていただいた、木村と申します。
2000年11月20日付けにてお送りいたしました下記請求書の件ですが、
A株式会社 a様を通じ、再三にわたりご催促申し上げているにも関わらず、
2001年6月1日時点で未だご入金が確認されておりません。
ご請求よりすでに半年以上の時間が過ぎております。
下記金額の件、6月5日までにご入金いただきたくお願い申し上げます。

私といたしましても、この程度の金額で法的手続きを取ることは
望んでおりませんので、よろしくご理解いただけるよう
重ねてお願い申し上げます。


 6月5日までと期限を切ったのは、これ以上ダラダラと話を延ばされて、ウヤムヤにされないようにするため。「法的手続き」は脅しも兼ねているが、こちらは「泣き寝入りをするつもりは絶対にない」という気持ちを伝えるために書き加えた。
FAXを送信する前に私なりに色々情報を集めてみた。お世話になっている税理士さんからは「請求はずっと続けてください。電話でもかまわないですから。こちらはあきらめていない、という意思表示をすることが大切です。意思表示をしないで放っておくと時効になるおそれがあります。」とご教授いただいた。他にも何人かの知り合いにご相談にのっていただいたりもした。
それからインターネット。ネット上にはこういう場合の対処法などが解説されているサイトがある。インターネットはこういう場合本当にありがたい。

 支払ってくれない売掛金の回収というページによると、まずは「内容証明郵便」を出すことが効果的とある。内容証明郵便とは改まってこちらの意志の強さを表すには、もってこいの方法だそうで、要は上のFAXの内容をを正式に書面にしたものだと思っていいだろう。書き方についてはこちら。内容証明郵便の書き方と利用法
しかし、内容証明は法的な強制力はないので、それでも支払われない場合は、今度こそ「法的手続き」となる。ただし、いきなり裁判(訴訟)になるわけではなく、その前にもう一度催促を促すことができる。その方法には2つあって、ひとつは「調停の申し立て」、もう一つは「支払督促の申し立て」だ。
「調停の申し立て」とは簡易裁判所で第三者(通常は担当裁判官1名と調停委員2名)の立ち会いの元、円満解決を試みるための話し合いをする、というもの。あくまで「話し合い」なので相手に支払う気が全くない場合には効果が期待できない。ただ、話し合いがうまく行った場合は、その内容は法的に尊守されるので、話し合いの結果を相手が守らない時は強制執行される。
「支払督促の申し立て」は、裁判所が一方的に「払え」と言ってくれるもので、それに対し相手が「異議の申し立て」をしない限り強制執行できると言うもの。つまり「異議の申し立て」が無ければ、こちらの不戦勝ということになる。
異議の申し立てがあった場合、今度こそ本格的な訴訟、つまり裁判となる。

 さて、FAXを送った翌日、脅しが利いたのかb氏より電話があった。「こちらの手違いで請求書を紛失してしまい、そのまま今日まで時間が過ぎてしまった。まったく申し訳ないことをした。早急に手続きを取るが、20日まで待って欲しい。それから請求書を再発行するように。a氏からは何も聞いていない。a氏の対応の悪さにはこちらも困っている。」という事を言われた。a氏から何も聞いていない? そんなはずは無かろう。苦し紛れのいいわけがミエミエだ。請求書の再発行はかまわないが、20日までまって欲しいというのはNO。たかが30万円、そのくらいはすぐに用意して振り込むくらいのことは出来るはずだ。請求書を紛失したのはそちらのミスで、こちらは嫌な思いをしながら半年以上待っているのだ。それでもそちらの都合を通すつもりなのか? と詰め寄る。「社長と相談して折り返し電話をする」と言うことで、いったん電話を切る。どうやら裁判は免れそうだ。が、その後その日は連絡無し。

 翌日b氏より電話。驚くべく内容。
社長に相談したところ、この金額はA社から払ってもらうことになったので、当社は関知しない。ちなみに初め当社へ請求を起こしてもらうように頼んだのは、ロゴの版権譲渡を明確にするためだ。a氏には請求書と共に版権譲渡の内容を明確に記した書面を同封するように指示したのだが、それが送られてこなかった。なので保留にしたままでいるうち、請求書自体を紛失してしまった。「版権を譲渡する」と明示した書類を早急に郵送すること。話はそれからだ。木村さんには関係ないと思うが、当社とA社ははっきりした契約を結んでおり、初めにかなりの額の支度金をA社に渡している。しかしA社はこちらの要望をなかなか満たしてくれない。近々取引を停止するつもりだ。なので今回の金額はA社に渡した支度金の中から支払ってもらうことにする。A社とはこちらで話し合いをするから、結果を待つように。

ふざけるなっ

どうやらA社、B社間のトラブルに巻き込まれてしまったようだ。こちらは指示通り、いったんA社宛に送った請求書をB社宛に書き直して送っているのだ。そちらの都合は、それこそこちらには関係ない。入金はB社からあって当然だろう、と切り返すもラチがあかない。版権譲渡の件は初耳だが、最もな話なので早急に郵送するとして、まずはa氏へ電話。ことの次第を説明すると「そうなんですよ…。私もB社とは手を切ろうと思ってまして…」
何? 何なの? そのあやふやな返事は? 裁判まで考えてた私の気持ちはどうなるの? 今までa氏のことは信頼していたのに、ここへ来てそういう態度はないでしょ…。
b氏からの連絡を待たず内容証明を送るつもりでいたのだが、気持ちが萎えてしまう。「私(a氏)が払うにしてもB社が払うにしても、必ず木村さんには入金しますから」という言葉を残し逃げるように電話を切られる。直接合って話をしようかと思った所、考えてみたら私はA社へ行ったことがないことに気が付いた。この名刺の住所が嘘だったりして…。「トラフィックは私が動く」と言っていたのは、もしかしたら私に来社して欲しくなかったのかも…。なんてかなり疑心暗鬼に陥る。

 取り急ぎ版権を譲渡する旨を書いた書面を速達で郵送する。念のため請求書の控えを同封し、請求した金額の入金が確認された時点で譲渡します。と加えておいた。

 6月10日。話し合いがどうなったのかは知らないが、b氏より電話。連絡が遅くなったが、やはり当社から振り込むことに決まった。今日は無理だが早急に入金する。
そして6月14日。入金確認。

 まったく…。「棚からぼた餅」と喜んでいたのが、こんなことになろうとは…。なにはともあれ、私の手元には無事30万円が入金された。あとはA社とB社との関係がどうなろうが知ったこっちゃ無い。もちろんだが、2度とこの両社の仕事をする気もない。

 ここを読んでくださっている方の中にも、似たような経験を持つ方もいるかも知れないし、とうとうギャラを手にできなかった方もいるかも知れない。
今回のことで私が一番痛感したのは、キチンと自分の仕事に対する対価が支払われないというのは、どれだけミジメな思いをするか、ということ、そして簡単にあきらめてはいけない、ということだ。裁判をしなさい、とは言わないが、少なくても泣き寝入りを決める前には、やってみるだけ価値がある行為はいくつかある。相手の会社の玄関先で大声でゴネるだけでも、かなりの効果があるとも聞いた。平気でギャラを踏み倒す会社は、他にも似たようなことをするはずだ。そして、そんな理不尽な話しがまかり通っていいはずがない。
今回の件は私にとってもいい勉強になった。今後こういうことがあっても、私は決してあきらめない。とことんやるから、そのつもりで。<お客様各位。

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