HITORIGOTO
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蜘蛛の巣にひっかかった



 契約しているプロバイダ(3web)から契約更新手続きのお知らせがメールでとどいた。3webは年間契約なので、前回更新してからもうすぐ1年がたつことになる。
このHPでずいぶんと生意気なことを色々書いているが、実は私はインターネットをはじめて、まだそんなに時間がたっていない。もうじき2年、という程度だ。世間で「これからはインターネットの時代だ」と騒がれだしてからも、正直、インターネットが自分にどれだけの利益を与えてくれるか、わからなかった。いや、時間と金の無駄だとさえ思っていた。なぜなら周りですでにインターネットをはじめていた友人達のお勧めの言葉は、口を揃えたように「情報が早い」「1MB程度のDATAなら瞬時で送れる」「Hな画像見ほうだい」というもの。
情報が早いと言ったところで、少々のタイムラグをおけば、雑誌などでいくらでも情報は手に入る。DATAが瞬時に遅れるのは魅力かも知れないが、営業はフェイス・トゥ・フェイスが基本だろう。ちょっとした雑用でもお客さんの所へ「顔を出す」ということが何より大切なのでは?Hな画像は…。そりゃまぁ、見たいけど(笑)わざわざ、電話代だの契約料だの払ってまで…。まぁ、そのうち、やらなくてはならない時期が来たら、始めればいいと考えていた。

 ところがいきなりその「時期」が来てしまった。私が会社案内を制作した会社が、その内容をそのデザインテイストでHPにしたい、と言ってきたのだ。もちろん初めは断った。HP制作どころかメールのやりとりさえ、やったことがないのだ。おまけに私に依頼してきた代理店の営業マンも、依頼主の会社の人もやったことが無いと来ている。制作者の私を含めた全員が初心者という状況で出来るわけがない。しかし、いつも何かと気を回してくれ「お互いに勉強しながら作りましょう」とまで言ってくれる代理店の営業の方の頼みでもあり、断りきれず受けてしまった。

 その日のうちにネットをやっている友人の所へ相談に行く。「まず、自分でインターネットにつないでみることが何より先決だよ」とアドバイスをもらった。そりゃ、そうだ。で、その足で秋葉原へモデムを買いに行った。何の下知識もないまま行ったので、店員の薦められるままにモデムを買う。それとインターネットの雑誌を一冊。事務所にもどり、早速挑戦してみる。しかし、つなごうにもプロバイダと契約していない。で、雑誌から繋ぐだけならできる(メールは送れない)プロバイダを見つけだし、MacOSに付いてきたインターネット接続設定を使い、なんとかつないでみる。ダイヤルQ2なので割高だが、仕方がない。
つながった。いともあっさりと。なんだ、簡単じゃん。

 契約するプロバイダは明日以降じっくりと考えるとして、とりあえずHPってどんなものか見て回ることにした。いわゆるこれがネットサーフィンってやつか…などと思いながら(笑)。
感想。なんだかどれも同じようなデザイン。しかも文字ばっかりで、読むのが疲れる。この時はなぜ、みんな同じ様なデザインになるのか、なぜ文字情報が主体なのか知らなかった。
とにかく早急にHPのデザインを考えなければいけない。そうだ、デザイナーのHPへ行けば凝ったデザインのページが見られるかもしれない。そう思い、初めてヤフーで検索。「デザイナー」とか「DTP」をキーワードに回ってみる。「ほう」と思わせるものもいくつかあったが、基本的にはどこもテキストベースのページである。HPってそんなものなのかなぁ。なんだか大したことないのかも…。今考えると、とんでもない勘違いなのだが、正直その時はそう感じていた。

 やはりテキストベースのページなのだが、そうして見て回った中に気になるサイトが3箇所あった。「DTP-S/誰にでもできるDTPのために」「DTPの壺」「えでぃっとはうす別館QuarkXPress奮戦記 」の3つである。これらのサイトはDTPにまつわるTips集を惜しげもなく無料で公開している。また、掲示板などで情報のやりとりをしているようだ。見ていると私の知らないTipsが沢山出ているではないか。これはいい。思わず読み入ってしまう。実はこれがHPの醍醐味だと後で知ることになる。

 とりあえず依頼されたデザインを考えながら、やはり最初から全て自分でやるのは無理がありすぎるだろうと思い、HPの制作もしている友人の丸山氏に今回の仕事を助けてもらえないか打診した。幸いこちらの状況(全くの初心者)を把握した上で、快く引き受けてくれた。ワークフローとしては私がラフを作り、「これは出来る、これは出来ない」と判断してもらい、再ラフを作った状態でプレゼン。決定後は丸山氏にHTMLを組んでもらうことになった。
デザインを考えながら思った。このHPをはたして見たいと思う人がいるのだろうか?自分だったら…決して見たいとは思わない(笑)。ではどういうページなら見たいと思うだろう?色々思い悩んで行き着いた答えは、上記の3つのサイトだ。ここには私が欲しいと思う情報が満載だ。
「そうか、情報を提供するっていうのはこういうことか」
さっそく代理店の営業さんに相談する。「会社案内の内容だけでなく、なにか人が見に来たいと思うような情報を掲載しましょうよ。そうしてこそインターネットですよ!」気分はすっかりベテランWebデザイナー(笑)。
営業さんも乗ってくれて、お客さんを説得することに。もちろん情報内容はお客さんの業界の人(特にお客さんにとってのお客さん)が見たいと思う内容に絞り込むこと。ちょうど私が上記3つのサイトに魅かれたように。幸いお客さんも賛同してくれて、「業界ニュース」というコーナーを設けることになった。

 この際、ちゃんとWebのことも勉強しよう、それには自分のHPを作ってみるのが一番近道だろう、そう考えた。仕事と平行して自分のサイト作りが始まった。まず、コンテンツとデザインを考える。自分のページだから、何の制約も無しに自分が作りたいように作れる。デザインはどこにでもあるようなものはやめたい。一応デザイナーなんだから(この考えで後に痛い目に合うことになる)。コンテンツは…かなり悩んだのだが、自分のポートフォリオ(作品集)を中心にすることにした。できれば同業以外の人が見ても楽しめるように、裏話も添えよう。それと、他のDTP関連サイトには遠く及ばないだろうが、自分なりに知っているTipsも公開してもいいのでは?こういうものを公開するサイトは、多い分には構わないだろう。そのくらいしか私に発信できる情報は無いんだし。

 おおまかにデザインスケッチを完成させた後、「ページミル」というHP制作ソフトを買ってきた。まずマニュアルを一読。次にチュートリアルをやってみる。何となく解ったような、解らないような…という状態だが、早速デザインラフにあわせたものを作ってみる。しかし、思うようにいかない。やはり基本であるタグの構造が解ってないと、うまく使いこなせないようだ。普段DTPの仕事では、使い慣れたソフトが自分の手足のように動いてくれ、イメージした物をどんどんモニタ上に描いてくれるのに、なんだこの使い勝手の悪さは…。と、すべて「ページミル」のせいにして放り出してしまった。丸山氏に「HP制作ソフトって、こんなもんなの?」と聞いてみる。「そうですねー。手になじまないんだったら直接タグを書いてみたらどうです?ハイパートークより簡単ですよ」との答え。そう、私は昔、ハイパーカードで少々遊んでいた事がある。ならばと、タグの書き方を解説している本を買ってきて、早速試してみる。最初ちょっとだけとまどったが、やってみると何とかイメージした物ができそうだ。初めは少し恐れをなしていたのだが、慣れてくるとそこそこ出来るようになる。出来るようになると楽しくなる。なによりタグを自分で書くとHTMLの構造もよく解るし、ソフト任せではないので、自分の意志で「ここに色をつける」とか命令している気分になる。
なんだ、簡単じゃん。(すぐ調子にのる…笑)
勢いに乗ってJavaScriptでロールオーバーなんてやってみる。おぉ、なんだか面白い。動いたり、マウスの動きに反応したりなんて、印刷の仕事ではあり得ないことだ。これを自分で作って不特定多数の人に公開できるなんて、なんだか新鮮。HTMLなんて恐れるに足らずだ(笑)。
こうして出来上がった私のホームページ処女作を公開したのは、あの日あわててモデムを買いに行ってから1カ月半のことだった。

 しかし、このデザインには大きな欠陥があった。天地左右を囲んでしまったため、文字がオーバーフローすると、全体の形が崩れる、というもの。だから文字数にかなり制限がある。汎用性や見え方の統一、ブラウジングのしやすさを考えると、デザインはかなりの制限に縛られることを知る。そうか、HPに似たようなデザインが多いのは、なるべくしてなった形だからなのか。しかもテキストベースなら、軽くて密度の濃い情報を発信できるってわけだ。なるほど…。
公開して間もなく、Winユーザーから指摘があった。どうやらWinで見るとデザインが崩れているらしい。なんで?ブラウザで確認しながらオーバーフローしないようにつくったはずだし、自分のマシンで見る限りちゃんと表示されているではないか。知り合いのWinユーザーに頼み、自分のHPをWinで見せてもらった。ぐちゃぐちゃ…。Winでは表示される文字がでかいのだ。
うわぁ、恥ずかしい…。
確かJavaScriptにプラットフォーム別に命令を分岐する、ってのがあったはずだ。それを使ってWinでは小さい文字の表示に出来ないだろうか?あわててJavaScriptを勉強しだした。結果、どうにかなったみたいだ。ふぅ、やれやれ。

 自分のHPを持つと他人のページもそれまで以上に気になる。簡単だが、やってみるとHPはなかなか奥が深い。面白いページやためになるページも、あれから沢山見つけた。そしてそこには、すっかりインターネットにハマってしまった自分がいた。初めは全く期待していなかった、HPを通じての仕事の依頼も来るようになった。ネットを通じて色んな人に知り合うこともできたし、DTP関連のサイトでは、相変わらずお世話になっている。Hなページもちょっとだけ見ている(笑)。

なんで、もっと早く始めなかったんだろう。今ではそれを後悔している。

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