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正しいベッドの選び方
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 ウォーターベッドの弱点とは、まず第一に高価すぎることだ。正確な数字は忘れてしまったが、その金額を聞いたときには、思わず笑ってしまうほどケタが違いすぎた。家具屋の店員も「まさか買わないだろう」という態度だったくらいで、まぁ話の種に、という意味合いで展示しているとさえ言っていた。またウォーターベッドは値段が高いだけでなく、設置がたいへん困難で、専門の業者に頼まなくてはならないそうだ。なので引っ越しはもちろん、寝室の移動すらままならない。そのたびに業者に来てもらって、中の水を抜き移動、また水を充填する必要があるという。さらに下が水なのだから当たり前と言えば当たり前だが、隣の人が寝返りをうつたびに揺れる。船酔いに弱い人だと寝ているだけで酔ってしまうらしい。確かに寝具としては最高のベッドなのだが、そういう理由からお店でもあまり勧めないと言う。実際、日本の住宅事情を考えてもウォーターベッドは少々無理があり、日本ではこの先数年以内に販売されなくなる気配があるそうだ。そうすると設置業者もなくなるだろうし、無理して買ってはいいが、後々困ることになる。

 そういうことから、ウォーターベッドまでとは行かないまでも、柔らかくて設置も簡単なベッドが出てきた。最近はやりの「低反発」というやつだ。私が腰痛持ちだと聞いたある店の店員などは「いや、実は私も腰痛だったんですけど、このベッドで寝るようにしてから直りましたよ」と鼻息も荒く説明を始めたくらいだ。

 低反発というのはベッドのマットレス表面に特殊はウレタンが敷いてあり、このウレタンがウォーターベッドのように沈むのだ。さらにこのウレタンは反発力が弱く(つまり低反発なわけ)、体に合わせた形状になってから体を押し戻さない仕組みになっている。なるほど、これなら良さそうじゃないか、とかなり購買意欲をそそられた。店員いわく、低反発にもピンからキリまであって、安物では意味がないそうだ。安物はこのウレタン部分が薄く、体の形状に合わせるまで沈ませることができない。体の凹凸が少ない人ならともかく、ナイスバディな人は高いベッドを買いましょう(笑)ということだ。

 もちろんウォーターベッドほどでは無いにしろ、ウレタンの厚い低反発ベッドは結構な値段がする。ちょっと悩むところではある。しかし気分はすっかり快眠ベッド一色に染まっている。その日は買わなかったが、もう低反発意外は考えられない状態で、それを基準に他の家具屋も見て回ることにした。

 低反発というと枕が有名である。ここでちょっと話はそれるが枕についても書いておく。実は今回の引っ越しよりずっと以前に私は枕を代えたことがある。実は私は結構「眠りフェチ」でもあり、そば殻の枕はどうしても体に合わないことを感じていたのだ。前のページで書いたように、立った時の姿勢を基準に考えると、普通の枕は高さがありすぎる。実際肩や首が凝るのだ。眠って朝起きると肩が凝っている、という不思議な現象に悩まされた時期があった。ある日試しに枕を外して寝たところ実に気持ちよく眠れたので、それ以来低い枕を使用している。人間が横になったとき、背中から後頭部までの高低差はほんの数センチだ。この高さに合う枕がいいのは全くの道理なわけで、私は旅行先で旅館に泊まる時などは、枕を外し座布団を枕代わりにして寝ている。たまにヨダレで汚すこともあるのだが…(笑)。

 さて、低反発のベッドを求めて家具屋を回った私たちだったのだが、実は実際に買ったベッドは低反発ではなかった。それはなぜかというと、最後に行った家具屋で低反発ベッドのデメリットを聞いてしまったからだ。それは…。

 低反発に使うウレタンは体温を関知して沈む仕組みになっている。そのため熱を逃がさないように出来ているのだそうだ。熱を逃がしてしまうとウレタンは反発してしまい低反発では無くなる。で、私は非常に暑がりで汗っかきなのだ。冬はいいかもしれないが、夏はまるでオネショみたいな量の寝汗をかく。暑がり、汗っかきの人には低反発は向きません、とハッキリ言われてしまった。

 その店ではベッドを新しく購入した人に、古いベッドの引き取りサービスをやっている。そして引き取ったベッドを新人店員の研修時に見せるのだという。私たちに対応した店員も研修の時に見たと言っていたが、古いベッドはマットレスがヘタるとかいう以前に、ものすごいカビが発生していて、とてもこの上に寝る気にはなれないくらい不衛生なのだそうだ。カビの原因は、そう、寝汗だ。
ベッドの下に引き出しが付いているものがある。実は日本以外ではこんなベッドはお目にかかれないそうだ。日本の住宅事情から出来た日本独自のベッドなのだが、これほど日本に向いてないベッドもまた無いとその店員は言う。高温多湿のこの国の気候でベッドの下をふさいでしまっては、寝汗の行き場が無くなってしまう。7〜8年使ったベッドのマットレスの下、つまり引き出しの上の部分は、たいてい真っ黒にカビで覆われているのが現状だそうだ。人間はそのくらい寝汗をかく。まして私のように汗っかきな人はベッドの下は必ず空けておくように、まして低反発で余計に寝汗をかくようなことはしない方が良いと言われた。

 結局、どんなベッドを買ったのかと言うと、アメリカ製のKINGSDOWNというメーカーのものだ。これはウレタンではなくスポンジとスプリングの量をふんだんに使うことで、柔らかさを実現している。KINGSDOWNの一番いいベッドに寝てみたところ、まさに雲の上に浮いているような気分だ。そのくらい心地よい。ただしお値段も雲の上(笑)。「確かにいいんですけどねぇ…。これじゃちょっと手が出ませんよ。」というと、店員はにっこり笑って「みなさんそう仰います」と言う。で、そのお店に置いてあるKINGSDOWNのベッドの一番安いヤツ(シングル84,800円)に寝てみたところ、確かに高いものと比べたらかなり固めではあるのだが、それでも低反発のベッドより柔らかいではないか。しかも低反発のウレタンが厚い物より値段も安い。というわけで、なんだかうまく嵌められた気もするが、このベッドに決まった。

 まだこのベッドを使い始めてから数日なので、腰痛が治った訳ではないが、確かに寝心地は良い。何より今まで朝起きると感じていた背中とお尻の痺れは、まったく無くなった。このまま数ヶ月して腰痛が無くなってくれれば、無理してこのベッドを買ったかいがあるのだが、さてどうなのだろう…。

※KINGSDOWNベッド取扱店:IDC大塚家具 http://www.idc-otsuka.co.jp/

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