烏魯木斉は「うるむち」と読みます。当て字でしょう。前ページで書いたように、敦煌から先は西域。かつては中国では無かった場所です。北海道のアイヌ語の地名を漢字にあてているのと同じだと思います。実際、敦煌から西では、まず人の顔が全然違いました。言い方が変ですけど、敦煌から先は外人さんの顔でした(笑)。そう、私が会いたかった「少数民族」の方々です。
話はちょっと敦煌に戻ります。敦煌を出発する前日に敦煌のガイドさんに「明日の飛行機は何時ですか?」と訪ねました。「8時です」と答えが返ってきたので、「それは朝の8時ですか? それとも夜の8時?」と訪ね直したところ、ガイドさんはしばらく不思議そうな顔で考え込んでから、こう言いました。
「8時は夜と言いません。」
そうなんです。中国はあの広い国土全部、統一時間なんです。時差はありません。なので西の方へ行くと、20時なんてまだまだ昼間のように明るいんですよ。はは。
で、まだまだ明るい夜の8時に出発した飛行機は烏魯木斉の空港へ到着します。烏魯木斉は今回のルートの最西端です。北京・西安・敦煌を経て、ここで一気に最西端まで飛び、ここから折り返して吐魯蕃・蘭州・上海へと向かう予定です。
敦煌ではまだ明るい8時でしたが、さすがに烏魯木斉に着く頃は真っ暗になっていました。中国で乗った国内線の飛行機は全てプロペラ機で、空港ではタラップで飛行機から直接地面に降ります。烏魯木斉空港に着いた私たちは順番にタラップを降りました。そして私より先にタラップを降りた人たちが、夜空を見上げて口をあんぐりと開けてます。なんだ? と思い、私も見上げてみると…。そこには、まさに満天の星。もう、すごいんです。プラネタリウムなんて目じゃありません。夜空いっぱいに所狭しと(本当に「所狭し」って言葉が似合います)星、星、星。感動ものです。こんな所までくれば空気も澄んでますし、明るい建物もありません。いや、本当にすごかったです。マジ、感動しちゃいました。
夜遅くに烏魯木斉へ着いた我々は、そのままバスに乗り込んでホテルへ直行。さすがに疲れが溜まってきていたのか、バスの中でも全員ぐったりしていていました。それでも翌朝、烏魯木斉観光が待っています。朝食後、ホテルのロビーに集合してバスに乗り込みます。そして烏魯木斉の町へ。そこで待っていたのは……。
綺麗に舗装された道路。立ち並ぶビル。行き交う車。えぇ〜〜〜っ。そんなぁ……。砂漠の中のオアシスって、こんなイメージじゃ……。
「都会なんでびっくりしたでしょ? 烏魯木斉って開けてるんですよ。」と笑う大塚さん。考えてみれば空港がある町です。開けていても何の不思議もありません。でもさぁ…。
その烏魯木斉で何を見たのか、ほとんど覚えてません。確か小高い公園で町を見下ろしたことだけは覚えてます。その公園でアイスクリームを買って食べたことも。あと市場へ行きました。これはちょっと面白かったです。どの国へ行っても市場っていうのは面白いです。その国らしさを一番感じられるのではないでしょうか。そうそう。それから、この町ではタクシーは乗り合いの軽トラックなんです。それに乗りました。荷台に。ちょっと面白かったです。烏魯木斉の記憶はそれだけです。はい。。。
そそくさと(笑)吐魯蕃(とるふぁん)へ向けて出発しました。烏魯木斉から吐魯蕃へはバスで移動でした。確かほぼ一日かけて移動したと思います。オアシス都市からオアシス都市へ陸路で移動です。これこそ「シルクロード」を行く、ってなわけです。途中道ばたのスイカやハミウリを売ってる所で、大量にスイカとハミウリを買い込みました。バスが道の途中で故障したときのための、水分補給用だそうです。
ハミウリって知りませんよね? 知っていたらかなりのツウだと思います。このあたりの特産品で、大きさはスイカくらい、少し楕円形で、味はメロンをもっと甘くした感じです。哈密(はみ)という場所があるので、そこが原産地なのかもしれません。もちろん初めて食べたのですが、このハミウリの美味しいこと、っていったら、そりゃもう、とろけちゃいそうです。上海あたりでも買えるらしいんですが、味は格段に落ちるので、遠くこのあたりまで来た中国人は皆、ハミウリをお土産に一所懸命かついで帰るそうです。確かに数日後、飛行機の中で一緒になった中国人は、皆ハミウリを抱えてました。飛行機の通路をゴロゴロと転がったりして、笑っちゃいました。
で、このスイカとハミウリなんですけど、烏魯木斉を出て少し行った路上で買い込んだんです。んで、ここでちょっと面白い出来事に遭遇しました。日本でも地方へ車で行くと、路上で野菜とか売ってたりしますよね。あんな感じでスイカとハミウリを売ってるんですよ。で、そこでバスを止めてみんなの分買い付けたわけです。たまたまなんですけど、その時私がまとめてお金を払ったんですよね。
中国のお金って「元」っていう単位です。当時、元には2種類あって「人民元」と「外貨元」というのがあったんです。人民元は普通に中国の人が使うお金で、外貨元は旅行者など、外人が使うお金なんです。価値は別に変わりません。1元はどちらも1元。なんでそんなことする必要があるのか解りませんが、とにかくそうなっていたんです。外貨元で買い物をすると、当然、人民元でおつりが来ます。で、人民元は出国時に日本円とかドルとかに換算してくれないんですよ。両替できるのは、あくまで外貨元のみ。だから何か買うと、おつりの人民元を使い切らなきゃならないわけですが、それを狙っての制度なんでしょうかね。よくわかりません…。(今はもう外貨元は廃止されてます。)
それでね。私、スイカとハミウリのお金、外貨元で払ったんです。そしたら。ハミウリ売りの少年。キョトンとしちゃって。。。それから何か中国語で、周りの仲間に話しかけました。するとワラワラと周りの売り子が集まってきて、不思議そうに外貨元を覗いてるんです。そのうち誰かが、その子に向かって何か話し、やっと少年は私に笑顔で何か言ったんです(多分ありがとうと言ったのだと思います)。つまり、彼らはきっと「外貨元」など見たこと無かったんですよ。
って、君、それ、君の国のお金だよ…(汗)。
事の成り行きが理解できたら、今度はこっちがキョトンとしてしまいました。
つづく。